JUGEMテーマ:英語の文学
昨年7月からタイトルの本を読み始めました。
なぜ2020年のものを読み始めたかというと、これがカルチャーセンターの課題本だったから。
以前に受講していたクラスがなくなってしまったため、同じ時間帯の別のクラスを受講し始めました。
収録されているすべての短編を読むのではなく、イギリス人の先生が選んだものだけを読んでいます。
私は途中から参加でしたが、それまでに読んだものを教えてもらい、一応、読みました。
いまは最後の Purity を読んでいます。
近未来小説?と思われる内容。読めば読むほど、考えさせられ、おそろしくもなる話です。
設定としては、オランウータンとの関係性で大島渚の「マックス・モナムール」を思い出したり、
気候変動という点では以前に読んだオランダの The Netherlands Lives With Water by Jim Shepard を思い出したりします。
曖昧なままに終わりますが、物語のその後を考えると、なお恐ろしい想像が広がります。
]]>関屋康、ジョー・マイナード監修、加藤 聡子、山下 尚子著(2021)
『英語教師のための自律学習者育成ガイドブック』
神田外語大学出版局
でした。
私が読みたいと思っていた本を、読書会レギュラーの人が選んでレポートしてくれました。
最初に関屋、マイナードによる経験談があり、そのあと一般的説明、最後に授業でできる活動案が挙げられています。
学習者の自律に特に興味を持ったのは、以前e-Learningの科目を担当していたころです。
e-Learningは、その他の媒体を用いた自学自習と同様に、学習者自身の「やる気」に頼ることになりますが、指導者がいるとモチベーションを維持することが、より容易になる可能性があります。
e-Learningではなく、普段の授業の予習・復習についても、学習者の態度によって実行率が変わるので、自律することが望ましいです。
11月の読書会で読んだ『モチベーションの心理学』に通じるところがあるのかな?と思っていましたが、ちょっと違っていました。
以前にESACと呼ばれるアルクの「英語学習アドバイザー」という認定制度でアソシエイト資格をとりましたが、そのとき学んだコーチングの手法に近い事柄が述べられていました。モチベーションの上げ方や維持の仕方よりも、アドバイスの与え方に注目しているように思います。
学習者が教師のところにアドバイスを求めてくる、ということはなかなかないので、実際には学習者の意識を高められるように教師が働きかける必要があるでしょう。また、学習者が教師にアドバイスを求めて来やすいように、普段の授業での教師の態度が重要だと思いました。
関屋氏が引用した"From Sage on the Stage to Guide on the Side."というのは、覚えておきたい一文でした。「上から目線」ではダメだということですね。
授業での活動案は、実践的ではありますが、そのための時間を如何に確保するか、ということが問題になりそうです。でも、こういうことをやるべきだ、という意識を持つことが大切かな、と思いました。
]]>この作家を読むのは、これで2冊目。以前に読んだ『犯罪』と同じpage turner。読みだしたら止まらない。
『犯罪』と比べると、こちらのほうが暴力的で、いわゆる「社会の底辺」の人たちの話が多く、終わり方が曖昧な場合も多いという印象。『犯罪』のほうが爽快感があったような。
この人の話が面白く読めるのは、基本的には時系列で話を進めているけれど、内容によって時系列から離れて書いてあるせいだと思います。読者がどういう印象を受けるかを推測して、自然に、あるいは意外に感じられるように、話の順番を考えて配置してあるのではないでしょうか。私も話をするとき、こんなふうに話せれば良いなぁと思いますが、なかなか難しそう。
一方で、あまりにスルスルと読んでしまって、読んでる時は楽しいけれど、それぞれの話の展開が記憶に残っていないようにも思います。
なぜか、読み終わってからタイトルを見ても、どんな内容だったか思い出せない話も多いです。タイトルと内容が直接結びついていないからなのか。
映画で見た『コリーニ事件』をあらためて本でも読んでみたくなりました。
短く簡潔な文が多いので、もしかしたらドイツ語の勉強にも適しているかも?と思ったりしますが、どうなのでしょう。
英語訳も試してみたいです。
『犯罪』『罪悪』に入らなかった短編を収録した本が図書館にあったので借りて読みたいと思いましたが、まだ他に借りていて読んでいない本があるので、しばし我慢。
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『大学論を組み替える―新たな議論のために―』名古屋大学出版会 (2019)
それまでモヤモヤしていたモヤモヤが、はっきりとしたモヤモヤに変わる、という印象を受けました。
ただ、外国語科目や非常勤講師にはあてはまらないことが多いので、注意が必要です。
また、この本に載っている論考は他所に掲載されていたものの再録なので、重複や物足りなさを感じる所も少しありました。
『学校はなぜ退屈でなぜ大切なのか』ちくまプリマー新書(2022)
こちらは中高生向けの本ですが、教員志望の学生が読むと良いのではないかと思いました。
学校教育は何のためにあるのか、ということを考えさせる内容です。
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鹿毛 雅治 『モチべーションの心理学 「やる気」と「意欲」のメカニズム 』(中公新書 2022年, 1100円)
でした。
新書としては厚めで、しかも内容の密度が濃い! 「お買い得」な本です。
珍しく読書会の前に読み切れなかった…。
けれど、最近の語研読書会はレポーターが内容の要約をしてくれるし、これまた密度の高いレジメも作ってくれます。自分がレポーターになると少々負担に感じるけれど、90分を有効に使うためにはとても効果的です。
読み始めるとすぐに、付箋よりもメモを取りながら読みたいと思いました。モチベーション研究の歴史をたどっているようなところがあるので、研究者の名前やキーワードを記録して、それぞれについて詳しい別の本で読んでみたいという誘惑にかられます。
大学では教職科目に教育心理学があったので「動機づけ」についても少し学んだ覚えがありますが、そのころよりもはるかに研究が進んでいることを感じます。
私はキーワードに気を取られていましたが、レポーターはこの内容を英語の授業に如何に取り入れられるか、ということをしっかり考えておられました。
ただ残念なことに、この本の結論は、モチベーションにはさまざまな要素が絡んでいるので、こうしたら高まる、っていう話ではない、ということのようです。
「素朴理論」で考えても当然の結論ではありますが。
「やる気の出ないことでも、やり始めるとやる気が出てくる」という説や、「試験のためにやっていると思うと、やる気がしなくなる」という感覚は、この本の内容で説明できそうです。
まだ最後の2章を読んでいません。自分にとって役に立ちそうなことを探しながら、早めに読み終えたいです。
]]>はるか以前に同じく語研読書会で読んだ同じ著者の『英語リーディングの科学 ―「読めたつもり」の謎を解く』研究社 (2009年)の実践編、という位置づけのようです。
『英語リーディングの科学』の内容をすっかり忘れてしまっていたからか、とても新鮮な気分で読みました。(ダメじゃん)
「英語を読む授業」というタイトルなので、リーディングの授業の話かと思いましたが、もっと総合的な授業について書いてありました。
考えてみれば、いまは「リーディング」という科目はないので当然かもしれませんが、「英語で」授業をするためにはまず教室英語から、という内容に、あらためて自分の授業について考えさせられました。
でもその一方で、すべてを英語で行う必要はなく、むしろ上手に日本語を使うことの重要性が強調されていたように思います。
この本のように英語の授業の進め方の本を読むときにいつも感じる違和感の原因は、例として出されている教材に物語が多いことと、生徒が予習する(とまではいわなくとも、授業前に教材を見る)ことを前提としていないこと、です。いまの教科書には物語はほとんどないし、勉強熱心な生徒や授業に不安を感じる生徒は予習するだろうし、塾で予習してしまう生徒も多いだろう、と考えると、実際の授業では実現不可能な実践例が出ていることになります。学校指定の文科省検定済み教科書を使うことになっている現実に合う実践例が欲しいのですが、それは理想とする授業の進め方に合わないのですよね。どうしたらよいのやら。
ということで興味を持ったのは、鏑木良夫(著)『読解力を高め自信をつける先行学習—決め手はあなたの指導技術』ひつじ書房(2023年3月31日発売)という本です。予習を前提とした授業の進め方の本です。
この本については、また別の日に。
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語学教育研究所の読書会のテーマの本として読みました。
懐かしい表現や知らなかった表現がたくさん載っていました。
これはもう使われないのか…と思ったり(例:PC表現としての-challenged)、
良いと思ってたのにダメですか(例:the elderly)とか、
そんな言い方するんですか?と思ったり(例:shanghai)、
読み物としても面白かったです。
差別に関る表現や、婉曲表現は、『「させていただく」大研究』で滝浦先生が言っていた
「敬意逓減」に似た現象が起こっていると感じました。
婉曲的に表現するつもりで使っていた表現が、だんだんに直接的な表現に聞こえるようになって、
さらに新しい表現を生み出すことになるようです。
黒人や老人を意味する言葉は、まわりまわって本来の直接的な表現に回帰しつつあるのかも?とも思いました。
教師としては、新しい表現や用法をどの程度教材に盛り込むか、生徒・学生に教えるか、というのも問題ですが、
そもそも教師に知識がないといけないので、そういう点で、この本は教師にとっても役に立つと思います。
でも、この本に書いてあることも既に少し古くなっている可能性がありますね。
新しい表現を追うのはなかなか大変です。
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クリストファー・イシャウッド作。1932年頃のベルリンを舞台にして1935年に書かれた小説の、2020年出版の翻訳。原題は Mr Morris Changes Trains. 以前は「山師」という邦題がついていたようです。
のちにライザ・ミネリ主演の映画「キャバレー」になった小説「さらばベルリン(Goodbye to Berlin)」(1939年)と共にベルリン物語(The Berlin Stories)と呼ばれて、一冊の本になっていることが多いとのこと。実際、私が所有している英語版の電子書籍も、2つの小説を収録して The Berlin Stories というタイトルになっています。
前述の Goodbye to Berlin は、半世紀ほど前の高校時代に大学受験対策用のリーダー(英語の読み物が集められた本)でしばしば見たタイトルです。どんな場面が使われていたのか、内容は覚えていません。この話が映画「キャバレー」の元ネタだということは、昨年、カルチャーセンターの先生の話で知りました。キャバレーで働く女性に関わる話が受験用の読み物としてよく使われたというのは、考えてみるとおかしな感じです。
Christopher IsherwoodはW. H. Audenと親しく(二人ともゲイ)、この「いかさま師ノリス」にはオーデンへの献辞があります。
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フェルディナント・フォン・シーラッハ(Ferdinand von Schirach)はドイツの弁護士。
「コリーニ事件」は小説ですが、これまでに翻訳された「犯罪」「罪悪」「刑罰」などは短編集。
まずは近くの図書館にあった「犯罪」を読むことにしました。全11篇。
これは文字通りのpage turner!
淡々とした語り口で、犯罪者、周辺の人、警察や検察、弁護士、それぞれの視点から出来事を語っています。
1文が短く、表現は直接的で回りくどくない。ドイツ語の学習者にも読みやすいかも?と思ったりします。
とても淡々としているのに続きが読みたくなるのは、おそらく、出来事の並べ方のせいでしょう。
時系列で語られる話もありますが、遺体が発見されるところから始まって犯人の生い立ちに行き、被害者の毎日が描かれる、など、時間が前後する場合もあり、その使い分けが巧みなのだと思います。
最後に、判決が間違っていたと思わせる追記があったりもして、読者を惑わせます。
これは連続ドラマになるだろうなぁと思ったら、既になっていた模様。
作者が弁護士として担当した話と、どの程度の類似点があるのか、どんなふうにひねりを加えたのか、知りたいところですが、それは職業柄、明かせないですよね。
毎日一篇ずつ読もうと思っていましたが、すぐに読み終わりそうです。
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10月から標題の本を読み始めました。
グレアム・グリーンは短篇をいくつか読んだことがあり、すっきりした読みやすい文章を書く人だという印象でした。
が、これを読み始めて、そうばかりではないことが分かりました。
以前に読んだ短編は、ほとんどがMay We Borrow Your Husband?という短編集の中の話で、つまりはユーモア、エンターテインメント小説でした。
でも、Brighton RockはA Shocking AccidentやInvisible Japanese Gentlemenなどの短篇とは、まったく違うタイプです。
最初のChapterは場面や人物の設定がまるで分らず、状況をつかむのが大変でした。
Chapter 1の後半で少し雰囲気がつかめた時の印象は、ハードボイルド。
チャンドラー原作の映画を思い出しました(ロバート・ミッチャム演じる年老いたフィリップ・マーロウが"I'm growing old..."と言う場面が印象的でした)。
この小説は、初めはエンタメと捉えられていたようですが、後に、宗教(カトリック)に関わる本格小説とみなされるようになったそうです。
四分の一ほど読むと、少し探偵小説、少し恋愛小説、という感じも出てきて、今は半分を過ぎたところ。
時折、宗教の要素も挟まれます。
ラブストーリーに発展するのかしら、と思わせる部分もありますが、実際に起こっているのはギャングの闘争。
場面の描き方がとても映画的で、読んでいても映画を見ているような気分になります。
こういうのはすべて時代背景によるものかもしれません。
書かれたのは1930年代。19世紀の小説の書き方から新しい小説のあり方に変化し、アメリカのハードボイルド小説が人気を得、映画(トーキー)が一般的になってきたころです。
2010年の同名映画をDVDで途中まで見ました。
時代が1964年になっているほか、人物の関係や出来事が少しずつ原作と違っていますが、概要は同じです。
どの場面やどの要素をどのように変更しているのか、なぜそのように変更をしたのか、を考えながら見るのは面白いです。
Idaを演じるヘレン・ミレンはさすがの貫禄。Idaは、原作では胸の大きさが強調されています。ヘレン・ミレンもふくよかな印象は出していますが、原作ほどではないですね。
Rose役のアンドレア・ルイーズ・ライズボローは、とてもよく雰囲気を出しています。Roseがどんな女の子なのか、文章を読むだけよりもわかりやすく、話の展開に納得できます。この俳優さん、イニャリトゥの「バードマン …」に出ていたらしいです。よく覚えていないけれど。
主人公Pinkie役のサム・ライリーは、原作のイメージよりやや年上の印象ですが、冷酷な印象が合っています。
クラスでも話題になりましたが、映画と小説ではイメージが異なることがあります。
読んでから見るか、見てから読むか(古い角川映画のキャッチコピーですねぇ)
迷うところですが、
前半は読んでから見て、比較が面白かったので、
後半は見てから読んで、逆の比較をしてみるつもりです。
]]>COVID-19の流行のせいで、この3年間海外へ行っていませんが、2019年までの数年間、実にあちこちに行きました。
貯金は減るし、少し行き過ぎかなぁ、と年上の知人に話したところ、「行けるときに行っておいた方がいいよ」と背中を押されたので、思い切ってあちこちに行ったのでした。
この流行の間に年をとり、足腰の痛みや痺れも悪化してきたので、やっぱり行っておいて良かったなぁと思います。
それでも、もっと安心して旅行ができるようになれば、また行きたいなぁと思ってはいるのですが。
とりあえず、どこに行く前にどんな本を読んだか、簡単に書いておきます。
台湾
『台湾―四百年の歴史と展望』伊藤潔(中公新書)
オランダ
『街道をゆく オランダ紀行』司馬遼太郎(朝日文庫)
『三十か月−ユダヤ人家族を守り抜いた恐怖と幸福の日々−』シルト・ウォルターズ、朝比奈一郎/訳(冨山房インターナショナル)
Comedy in a Minor Key Hans Keilson(Farrar, Straus and Giroux)*
*必ずしも旅行するからという理由ではなく、以前から読もうと思っていた本。
アメリカ
『錯乱のニューヨーク』レム・コールハース、鈴木圭介/訳(ちくま学芸文庫)
『街道をゆく ニューヨーク散歩』司馬遼太郎(朝日文庫)
『レム・コールハースは何を変えたのか』五十嵐 太郎, 南 泰裕(編)(鹿島出版会)*
*旅行のためというより、以前に行ったオランダとアメリカをつなぐものとして。
ニュージーランド
『ニュージーランド人のまっかなホント』クリスティーン・コール・キャトリー、伊藤和子/訳(マクミランランゲージハウス)
『オーストラリアとニュージーランドの英語』山崎真稔(玉川大学出版)
ドイツ
『ドイツ史10講』坂井栄八郎(岩波新書)*
*10講全部は読み切れませんでした。まだ少し残っています。近いうちに読むつもり。
この中で特に良かったのは、
『街道をゆく オランダ紀行』司馬遼太郎(朝日文庫)
と
『ニュージーランド人のまっかなホント』クリスティーン・コール・キャトリー、伊藤和子/訳(マクミランランゲージハウス)
前者は本当にオランダの雰囲気が感じられて、旅の準備ができたという感覚。
後者はニュージーランドにいる人(現地出身であるか否かを問わず)および日本にいるニュージーランド出身者と話をするときに、相手の話を引き出す役に立ちました。
加えて
『錯乱のニューヨーク』レム・コールハース、鈴木圭介/訳(ちくま学芸文庫)
最初の3分の1ほどはニューヨークの歴史物語なので、基礎知識の確認になりました。
でも後の方は建築の詳しい話なので、なかなかついてゆけず、最後まで読んだのは旅行後でした。
早く旅行先の本を読む機会ができますように。
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北條文緒(著)「ニューゲイト・ノヴェル」という、この本自体は日本語で書かれていますが、内容は英語の小説に関するものです。
以前にも書いたとおり、ロンドンのニューゲイトと呼ばれる場所にあった刑務所の犯罪者を扱った一連の小説が、ニューゲイト・ノヴェルと呼ばれています。
Wikipediaの説明では、
The Newgate novels (or Old Bailey novels) were novels published in England from the late 1820s until the 1840s that glamorised the lives of the criminals they portrayed. Most drew their inspiration from the Newgate Calendar, a biography of famous criminals published during the late 18th and early 19th centuries, and usually rearranged or embellished the original tale for melodramatic effect.
となっています。
本の前半には、このような基本的な説明があり、後半は代表的なニューゲイト・ノヴェルの分析と、サッカレーを中心とする批判的な見方や、この時代の前後の時代に書かれた他の作品との比較などが書かれています。ディケンズ『オリヴァー・ツイスト』とサッカレー『虚栄の市』についても書いてあります。ディケンズもサッカレーも、死刑反対の立場でしたが、二人がそれぞれ公開処刑を見に行ったあとの感想が対照的であったことや、批評記事などに書いてあることと彼らの作品の内容に齟齬があることなどが興味深かったです。
時代的な背景、とくに中産階級が力を持ち始めたことや、警察や法律のシステムが整備されてきたことと、このような小説が生まれ、批判され、消えていったことには、強い関連があるようです。
ロンドンの警察の前身が「ボー・ストリート・ランナーズ」というものだったという記述がありました。調べてみると、これはヘンリー・フィールディング(あの「トム・ジョーンズ」の著者)が設立したそうです。逆に言うと、当時はまだ警察組織が整っていなかったのですね。探偵小説は、世の中の視点が法と秩序の側にたつようになって発展した、という記述も、なるほどー、と思いました。
そのほか、言及のある作家についてWikiで見てみると、どうやらこの時代の作家には、法律関連の仕事をしていた人が多かったようです。知識もあり、仕事上あれこれ知ることができたので、書くためのヒントがたくさんあった、ということでしょうか。
この本は複数の論文をもとにしているようですが、その割にはわかりやすいと思いました。この種の小説群の代表的な作品の概要や特徴を知ることができるのは助かります。一方で、原作を読んでいないと著者の主張が当たっているかどうか、自分では判断できない、という問題もあります。セカンドオピニオンが欲しくて、Wikipediaを活用することになりました。ま、私自身は専門家ではないし、論文を書くわけではないので、それで十分かなと思います。
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最近、新たに参加したクラスで、ジュンパ・ラヒリの短編集を読んでいます。ピュリッツァー賞などたくさんの賞をとった短編集Interpreter of Maladiesです。話題になった数年後に洋書バーゲンで買って、さらに長らく積読になっていた本。いつか読みたいと思っていたけれどきっかけがなく、何とかしたいと思っていたら、これを読むクラスを見つけたので参加しました。いま出版されている本とは装丁が違いますが、どうやらページは同じようです。良かった!
London Belongs to Meのクラスとは違って、短編を数回(2回ではなく、もっと何回も)かけて、先生の質問に答えながら筋を追って読みます。ちょっと大学の授業みたいで、20人以上もいる大学のクラスなら飽きてしまうかもしれません。でも、ほんの数人のクラスなので、すぐに答える順番がまわってきます。うっかりしていられません。
こうやって時間をかけて読むと、やはりそれなりにこまごま考えたり気づいたりすることがあるものです。
いっぽうで、前に読んだ部分を忘れがちです。他の参加者が、以前に出てきた要素についてコメントをしてくれると、なるほどと思うことが多いです。他の人と一緒に読むメリットですね。
数年前のコロナ禍以前、研究会を対面でやっていた最後の頃、仲間の一人が帰りの電車の中で、ラヒリのイタリア語の本を紹介してくれました。イタリア語が好きで、いまはイタリアに住んでいるのだとか。その時見せてもらったのは、イタリア語の原文と、他の人が翻訳したものとが見開きのページに対訳で載っている本でした。
自分で自分の作品を翻訳しないのかな、と思ったのですが、最近、Whereaboutsという小説が本人の翻訳で出たようです。イタリア語と英語の両方がわかれば、比べて読むと面白いでしょうね。もちろん、ご本人も面白い体験をされたことでしょう。
これまでに読んだ短編は、いずれも時間軸に従ったわかりやすい構成ですが、言葉の選び方や描写は、特異ではないけれど、よく考えられていると感じます。
わかりやすい構成と言葉で考えさせる話を語るのは職人芸的ですごいと思いますが、いっぽうで、出来過ぎな印象も受けます。
きっと頭のいい人なんだろうな。とウィキペディアのプロフィールに学位が並んでいるのを見て思ってしまいました。そういうことではない、と一方では思いますが。
私は、ちょっと破綻したところがあるものに魅力を感じるので、ラヒリが大好きな作家のひとりにはならないだろうと思いますが、ときどき読んで落ち着いた気分になりたくなる作家にはなりそうな気がします。
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London Belongs to Meの和訳。翻訳なら「私のロンドン」でしょうか。内容から考えると「みんなのロンドン」みたいな気がします。
さて、ついに本文734ページの450ページあたりまで来ました。半分を優に超えた!
しかし物語は混迷を深めています。窃盗に殺人、棚が落ちてケガ人が出たり、火事が起こったり。ついにドイツと戦争状態になり、市民にガスマスクが配られ、空には気球、子どもたちは疎開。
知らないことがたくさんありました。子供が疎開したのは日本も同じだし、以前にこのクラスで読んだ ルース・レンデルのOrchard Walls の主人公の女の子がロンドンから田舎町に疎開していたのを思い出しもしましたが、市民全員にガスマスクが配られたり、空襲をしにくくするために気球(barrage baloon)を飛ばす、というのは初めて聞きました。ウィキペディアによると、日本語では阻塞気球(そさいききゅう)というのですね。
その一方で、殺人容疑の裁判が進んでいます。大枚を払って著名な(??)弁護士を雇ったのに、一審では有罪。
当時は殺人で有罪=死刑 だったようです。
このあたりの話に関連して、先生がディケンズの作品に出てくる刑法批判などについて話してくれました。
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参加費徴収が難しいため、非会員も「当面無料」にしていることもあってか、以前より参加者が多く集まっています。
これまでに読んだのは
中島平三(著)『「育てる」教育から「育つ」教育へ 学校英文法から考える』大修館書店
バトラー後藤裕子(著)『デジタルで変わる子どもたち—学習・言語能力の現在と未来』ちくま新書
佐々木啓成(著)『リテリングを活用した英語指導―理解した内容を自分の言葉で発信する』大修館書店
若林俊輔(著)『若林俊輔先生著作集3英語4技能(聞く・話す・読む・書く)の指導』一般財団法人語学教育研究所
一般財団法人 語学教育研究所(編著)『英語授業の「型」づくり おさえておきたい指導の基本』大修館書店
小橋雅彦(著)『若い英語教師のための教材研究入門』大学教育出版
5月の読書会は、4月と同じ『若い英語教師のための教材研究入門』がテーマです。
4月の読書会では、レポーターが本の内容を簡単に紹介した後、関連した問題提起をして、参加者がコメントをしました。
中学・高校と大学では、教材に関する状況はかなり違うので、本の内容は必ずしも私に関係するわけではありませんが、問題提起をしてくれたので、いろいろ言いたいことを思いつきました。でも、年配者があれこれ言うより、若い人のアイディアを聞く時間を作る方が良いかなぁと思ったので、5月は少し黙っているつもりです。
読書会参加の申し込みは語学教育研究所のウェブサイトから。こちらです→ウェブサイト
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