OUR STORIES

英米文学の世界
映画の原作
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    JUGEMテーマ:英語の文学
    やっと少し余裕が出てきたので、さっそく映画を見ました。

    「プレシャス」Precious: Based on the Novel Push by Sapphire
    原作者サファイアは“パフォーマンス詩人”。Pushは彼女としては初めての小説。彼女の経歴を読むと、映画の主人公「プレシャス」と似たところが多いのに気づく。小説はプレシャス自身の一人称で、彼女の話し方そのままで書かれているらしい。最初の1行がこんな感じ:I was left back when I was twelve because I had a baby for my fahver.
    映画にはマライア・キャリーやレニー・クラヴィッツも地味な役で出演。マライアはスッピンで低音で話す福祉課のソーシャルワーカー。製作にはオプラ・ウィンフリーもかかわっている。サンダンスとトロント国際映画祭で最高賞受賞。
    この映画の解説を読んで、初めてNuyoricanという言葉に出会った。New York+Puerto Rican。

    「プレステージ」The Prestige
    原作はイギリスの作家クリストファー・プリースト(Christopher Priest)の1995年の小説「奇術師」(The Prestige)。ジェイムズ・テイト・ブラック記念賞と世界幻想文学大賞の受賞作。邦題「プレステージ」と聞いて、初めpre stageかと思ったが、実際は手品の3段階(the setup, the performance, the prestige)から来ている。
    映画は原作とは少々違っているらしいが、日記と回想によって時間が前後する構成は同じらしい。原作者も映画版を気に入ったとのこと。
    「手品」だからタネがある、と思っていると、あらら・・・という間に現実から離れてしまうところが「幻想文学」。鍵を握るのはニコラ・テスラ(エジソンのライバル?)。映画ではデヴィッド・ボウイが演じていたが、ボウイのイメージとは印象がかなり違っていたので、言われなければ気づかなかった。
    ウィキの解説で気になったのは、次の点。英語で読んだら訳が分からなくなるかも。
    Priest's work often features unreliable narrators, and thereby raises questions about narrative, truth, and the nature of memory and reality.
    映画全体の印象がH.G.ウェルズに似ていたが、時代設定のせいだけではなく、プリーストはウェルズの影響を強く受けているらしい。
    Wikipediaの記述:He has been strongly influenced by the SF pioneer, H. G. Wells, and in 2006 was appointed to the distinguished position of Vice-President of the international H. G. Wells Society.

    | mats | 映画 | 00:26 | comments(0) | - |
    The Professor's Houses
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      JUGEMテーマ:英語の文学
      前回紹介したAmerican Short Stories of Todayの中の一編です。
      「ゲド戦記」など、若い人向けのファンタジーで有名なル・グイン(Ursula Kroeber Le Guin)の作品。これはファンタジーではありませんが、主人公である教授の頭の中で広がる妄想は、ちょっとファンタジー的です。
      物語の一番初めの文は
      The professor had two houses, one inside the other.
      です。これを読んで、どういう状況を想像しますか? 私は家の中に秘密の部屋があって、そこが教授の「別の世界」みたいになっていて、もしかしたら女でも囲ってるのかと思いました。
      それが、まぁ、ドールハウスだなんて。

      この作品で私が気に入っているのは、主人公の家族が教授の変わった趣味を受け入れ、時には茶化しながらも、教授の気持を尊重しているところです。また教授自身も、少しやりすぎかなぁと思いながらもオタク気質を押さえきれないところは、いかにも学問に傾倒する知的な教授らしく、人間的な魅力を感じます。
      一瞬、"mad professor"になりそうになったとき、グッと押さえてまともな人間として暮らしていくところは、知的な人間の二面性をよく表しています。

      学問的追究というのは、特定の狭い範囲の事柄を追究するという点で、いわば「オタク」です。だから一般に学者というのは、広義のオタクなのだと思います。この話の教授は、まさにそういう知的オタクの異常さと良識を体現していると思います。
      | mats | 作品 | 03:10 | comments(0) | - |
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