2012.04.07 Saturday
Kazuo Ishiguro
JUGEMテーマ:英語の文学
更新を怠っていた間に、Five Stories of Music and Nightfallは読み終わりました。結局どれが面白かったかと聞かれれば、私的には3つ目の作品を選びます。前に書いたとおり、どれも特に好みではないのですが、Malvern Hillsの主人公の若者らしい過剰な自信と意地悪に、他の作品の人物には無いエネルギーを感じました。イギリスの若いロックミュージシャンについての記述も的を得ていて共感できました。
5つの物語に出てくるのは、どれもパッとしない演奏家ばかりですが、クラシック・ポピュラーを問わず音楽では食えないというのは常識なので、普通の演奏家でもあるわけです。逆に言うと、皆、フツーではないことを夢見ている人達なわけですが、その割にちょっと諦めモードの方が強くて、私にはあまり魅力的な人達には思えませんでした。
大笑いしながら読んだという人もいますが、私には大笑い「すべき」場面のように感じられて、本当に面白いとは思えませんでした。
逆上のあまりノートのページを破り取ってしまったので、それを犬のせいにしようと、ブーツを煮込む場面(これだけ読むと訳が分からないと思いますが)、授賞式会場からトロフィーを盗み出して、見つかりそうになって肉の中に隠す場面、の2つが代表的な「笑える」場面だと思いますが、両方とも人物が自分の失態(罪)をごまかそうとしている場面です。登場人物が良い人物として設定されているなら、誠実であって欲しいと私は思うので、このように「ごまかす」ためのドタバタなどは好みません。ユーモラスな場面が挿入されているとして良い評価をする人もいますが、私には唐突で、バランスが悪く感じられました。
50 Great Short StoriesとBest American Short Stories 2010についてはまた後日書きます。