OUR STORIES

英米文学の世界
「英雄」 by Joanna Trollope 試訳(1)
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    予定よりずっと長く島に留まってしまった。ただダラダラしていたということもあるが、母親も、付き合っていた彼女も、皆が間違っていると証明するためでもあった。小説を書くためにひと冬、地中海の島に引きこもるなんて、メロドラマみたいで陳腐だ、何週間かで嫌になるよ、とみんな言った。本なんか書けやしないよ。一人ぼっちで寂しいだけだよ。・・・確かにある意味では寂しかったし、シュロの木や、低木に覆われた丘にはもう、うんざりだった。小さな港ではいつもと同じ老人達がいつもと同じカフェのおもてに座り、いつもと同じ壊れかけた船が出たり入ったりしている。しかし彼は既にそんな島の風景にも、毎日のゆっくりしたリズムにも慣れてしまっていたし、とにかく、彼の小説は半分しか書けていなかった。7ヶ月間、ほかに何もすることがなく島で過ごしたあげくに、半分しかできていない小説を持ち帰ることになると思うと、国に帰る気持ちはすっかり萎えてしまうのだった。
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    | mats | 作品 | 01:50 | comments(0) | - |
    砂漠でサーモン・フィッシングほか
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      JUGEMテーマ:英語の文学

      「砂漠でサーモン・フィッシング」
      「トリフィドの日」
      おまけ「桐島、部活やめるってよ」

      「砂漠でサーモン・フィッシング」を見ました。
      原作はSalmon Fishing in the Yemen、著者はPaul Torday。
      http://www.amazon.co.jp/Salmon-Fishing-Yemen-Paul-Torday/dp/0753821788
      翻訳は『イエメンで鮭釣りを』、ポール トーディ 著、小竹 由美子 訳、白水社刊
      アマゾンに出ている出版社のコメントによると、著者トーディは「2007年に本作でデビュー。たちまち評判を呼び、60歳にして遅咲きのベストセラー作家となった」そうです。
      映画タイトルの「砂漠」はイエメン(英語名は定冠詞が付く)のことですが、映画の撮影はモロッコで行われたようです。
      奇想天外な話なので、どの程度現実性があるのか知りたくて、小説も読んでみたくなりました。映画のセリフは聞き取りやすく、職場での会話が多いので、英語教材としても向いていると思いました。小説のほうの文章も読みやすそうです。

      テレビで「パニック・イン・ロンドン」というテレビ映画を見ました。
      このタイトルでは完全なるB級というイメージになってしまいますが、原作はジョン・ウィンダムJohn Wyndham Parkes Lucas Beynon Harris (1903〜1969)の「トリフィドの日」(The Day of the Triffids)。私はこのタイトルで馴染みがありますが、「トリフィド時代」というタイトルの翻訳も出ていて、この方が意味としては良いようです。映画の中でも主人公が「人類の時代は終わって、トリフィドの時代が来た(the day of the Triffids has come)」と言っていました。
      テレビ映画は現代的に翻案されていますが、基本的には同じ内容です(原作を読んだのは、はるか昔なので、詳細は覚えていません)。「ラストデイズ・オブ・ザ・ワールド」というタイトルでDVDになっているようです。
      *1
      Oxford Bookworms Library (Stage 6) Meteor and Other Storiesにはウィンダムの短編が4編retoldで含まれています。またOxford Bookworms CollectionのA Window on the Universeには"Stitch in Time"が原文のまま収録されています。
      Penguin ReadersにはThe Chrysalidsのリトールド版があります。以前にテキストとして使ったことがありますが、これはダメでした。リトールドの仕方の問題もあったと思いますが、そもそもリトールドは何週間もかけて読むものではなく、一気にストーリーをたどって読むことにしか耐えない物だと思います。それ以来、テキストとしてリトールドを使ったことはありません。*2

      英語ではないけれど、しばらく前に「桐島、部活やめるってよ」も見ました。
      同名の原作小説は朝井リョウ作、集英社文庫で出ています。
      小説の方は、登場人物一人ひとりを各章の中心に据えて、それぞれの視点から書かれています(と立ち読みして思ったので、詳細に読んだら違うかも?)。映画の方も、やはり同じ日の同じ場面を、違う視点で描いています。名作「藪の中」を思い出しました。
      著者が大学在学中のデビュー作で、監督が文庫版のあとがきに書いていたように、高校生と近すぎず遠すぎない微妙な距離感がすごいと思いました。

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      | mats | 映画 | 16:53 | comments(0) | - |
      あけましておめでとうございます
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        すっかり放置してしまって広告だらけになっていました。
        失礼しました。

        実はこの前の投稿のReluctant Fundamentalistはすっかり読み終わっていますし、
        短編の和訳(翻訳というほど本格的ではない)を試みていたり、
        一応「英語の文学」に関連したことはしていました。

        今年も、というより、今年は以前よりもっとしっかり更新しようと思います。
        | mats | 管理 | 13:12 | comments(0) | - |
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