2014.02.16 Sunday
A Family Man
JUGEMテーマ:英語の文学
The Penguin Book of Modern British Short Storiesの4つめの話。family manというのは、家庭的な男、家族思いの夫、というような意味。
リーダーズ・プラスには"He is a family man."で「あいつはワルだ(泥棒など)」という例もありますが、これは特殊な前後関係の中だけの意味でしょう。
で、この話の中心的話題である男性Mr Corkは、どういう意味でfamily manなのか?
これが物語を貫く謎です。
物語に出てくるのは、Mr Corkに関わる二人の女性のみ。Cork氏自身は登場しません。
しかも主人公BereniceはMr CorkをWilliamと呼んでいるのに、妻(および登場しない別の女性Rosie)はMr Corkを"Bunny"と呼びます。どうやらBereniceはだまされていたらしい…。
というような推測はできるのですが、では真相はどうなのか、何がどうなったのか、誰がどんな嘘をついたのか、はっきりさせることはできません。
かつてWilliamはBereniceに、見知らぬ訪問者に女性の一人暮らしだと悟られないよう、父と一緒に暮らしているふりをしたほうがよいと助言しました。彼女はクエーカー教徒の家庭に育ったため、そんな小さな嘘にも罪悪感をもつのですが、Mrs Corkと話しているときは、なぜか自然に嘘が口を突いて出たりします。
彼女は特別な性格の人ではないようですが、それでも彼女の感覚は虚偽に満ちているということです。人間とは、こういうものなのでしょう。
作者のPritchettは1990年生まれで1997年没。作家生活は1920年代に始まったようです。この物語が含まれる短編集On the Edge of the Cliffが出版されたのは1979年。著者79歳のとき。女性の一人暮らしが一般的になってきた時代でしょうか。時代の移り変わりに興味を持って物語を書いていたことは容易に想像できます。すごい作家です。