OUR STORIES

英米文学の世界
Raw Water by Wells Tower
0
    JUGEMテーマ:英語の文学

    旅行に出ている間にクラスでは読み終わっていたので、クラスのディスカッションとは関係なく、さらっと読みました。
    ほんとうにさらっと読めば、おそらくハァ?という印象でしょうが、この話の要は、どことなく感じられる恐ろしさ。

    登場人物のちょっとした特徴(若い女性の目の位置がずれている)や現象(年配と思われる女性が乳児に母乳を与えている)、あるいは主人公たちのちょっとした変化(久しぶりの性生活とか、夫が若い女性に興味を持つとか)、まぁ、そういうこともあるさ、と言ってしまえば済む程度のことがたくさんある。
    登場人物の中には、人口湖の水は体には入れないと言い切る人もいる。湖で泳いだり貝を食べたりしている人たちは、意識して見れば、確かにおかしい。

    これは以前のThe Netherlands Lives With Waterと同じ雑誌McSweeney'sの32号に掲載された短編だそうで、やはり未来(2024年)における危機を描いています。同じテーマの雑誌から2編を取るというのは編集上の問題だっただろうと推測しますが、The Netherlands Lives With Waterは目に見える危機を描いているのに対して、この話の危機は目に見えず、気づかない内にジワジワと迫ってきている(かもしれない)という点で、違うタイプの短編として扱うことができるでしょう。

    さて、これでやっとThe Best American Short Stories 2010を読み終わりました。
    出版後2年経ってしまいました。やれやれ。

    | mats | 作品 | 12:08 | comments(0) | - |
    The Foreigner by Francis Steegmuller
    0
      JUGEMテーマ:英語の文学

      50 Great Short Storiesの終わりから3つ目の話です。

      これを読んで何に驚いたかというと、
      実際、驚いたのですが
      その文体。
      大昔の大学受験用文法書のような。

      こんな感じ:

      If it hadn't been raining as I came out of the cinema, I should have walked home: my apartment was nearby and the route anything but complicated---straight down the boulevard, crossing two streets and turning right on the third, the Rue de Grenelle, for about half a block. As it was, however, I hailed a taxi, and it was scarcely a moment before I realized that its driver, a ruddy-faced old man, was in the midst of an attack of perversity and nerves. ...

      仮定法過去完了、anything but、be動詞の省略、同格の名詞句、half a 〜の表現、scarcely before、......

      作者はWikipediaによると、Francis Steegmuller (July 3, 1906〜October 20, 1994) was an American biographer, translator and fiction writer, who was known chiefly as a Flaubert scholar.
      まぁ、ちょっと前の人です。Contemporaryではない。
      このThe Foreignerという作品は、French Follies and Other Follies: 20 stories from The New Yorker (New York: Reynal & Hitchcock, 1946)という短編集に含まれているらしい。戦前または戦中に書かれたことは明らか。

      こういう文章が一般向けの小説にふつうに出てくると思えば、小難しげな文法項目も勉強する甲斐があるというもので、教師の側はこの点を強調したいところでしょうが、幸か不幸か最近の小説では、あまりこういう文章は見かけない気がします。現にThe Best American Short Storiesではこういう文章は見かけませんから。
      しかし、たま〜に、大学受験用の問題集でしか見たことのなかった表現が、何気なく使われているのに遭遇して感動を覚えたりするわけで。

      侮れないのです。
      | mats | 作品 | 13:44 | comments(0) | - |
      The Netherlands Lives With Water by Jim Shepard
      0

        カルチャーセンターではいまだにThe Best American Short Stories 2010を読んでいるわけですが
        今読んでいるのは、
        The Netherlands Lives With Water by Jim Shepard
        近未来のオランダを舞台にした、一種のパニック小説。
        とはいえ、登場人物は決してパニックを起こしてはいない。
        危機が迫っていると分かっているが、行動できない人たち?
        それがとても現実的。
        現実に、こんなレポートも出ています。
        http://lra.louisiana.gov/assets/other/netherlands/NetherlandsLiveWithWater.pdf

        小説として面白いか、よく書けているか、という話になると、何とも言えないが、この手の話が特集されていた雑誌McSweeney'sの32号の他の話も読んでみたくなりました。
        https://store.mcsweeneys.net/products/mcsweeneys-issue-32
        表紙を見ただけで興味を引かれます。
        McSweeneys 32

        今朝のテレビで、東京都内の地下水量が増えているというレポートがありました。
        産経新聞の記事にもなってる。
        http://sankei.jp.msn.com/life/news/130616/trd13061612000007-n1.htm
        関連したニュースは以前から少しずつ出ていたわけですが、梅雨になって、さらに台風の季節を控えて(既に一つ来ました)、問題が深刻化しているということでしょう。
        http://www.shutoko.co.jp/company/press/h25/data/04/16_shinagawasen
        http://www.yomiuri.co.jp/homeguide/news/20130430-OYT8T00243.htm
        こういう報道を見聞きすると、終末が近づいているかしら、と思えてくるのですが。
        結局はJim Shepardの短編の登場人物たちのように、あれこれ方策を施しながら、決定打に欠け、呑み込まれていってしまうのかもしれません。
        いや、そうならないようにしないと。

        JUGEMテーマ:英語の文学

         

        | mats | 作品 | 13:48 | comments(0) | - |
             12
        3456789
        10111213141516
        17181920212223
        24252627282930
        31      
        << March 2024 >>
        + PR
        + RECOMMEND
        + SELECTED ENTRIES
        + RECENT COMMENTS
        + CATEGORIES
        + ARCHIVES
        + 本棚
        + MOBILE
        qrcode
        + LINKS
        + PROFILE